幌延深地層研究センター

見学会報告

 

三重大学教育学部技術・ものづくり教育講座電気工学研究室

松岡 守

 

 原子力発電環境整備機構(NUMO)支援を受けて,202288日から10日にかけて幌延深地層研究センター見学ツアーに行ってきました。以下その概要報告です。

 

【スケジュール】

202

 88日(月)移動日

 89日(火)13:5516:20 見学

 810日(水)移動日

※なおこの見学会に先立ち事前勉強会711日(月)に実施しました。

 

【参加者】

見学ツアー参加予定の7名(教育学部2年生2名,3年生2名,4年生1名,技術職員1名,教員1名)

 

【当日の状況】

幌延深地層研究センターについてあらましを簡単に説明いただいた後,展示物の見学,オーバーパックの説明とベントナイトの実験を経て,深度350mの調査坑道の見学をさせていただいた。見学後に質疑応答の時間を長めにとっていただいたところ,次のように様々な観点の質問が多数出て理解を深める有意義な見学会となった。

ガラス固化体はなぜ円柱形なのか,地下に微生物はいるのか/その微生物は悪さをしないのか,一万年後にキャニスターはどうなっているのか,ガラス固化体は熱応力でどのくらいひび割れてしまうのか,旧瑞浪深地層研究所はなぜ閉鎖されまた研究上問題ないのか,最終処分場が決まったらその後のどのようなプロセスを経て何年後にできるのか,等。

以下に説明資料,見学ツアー時の写真を示す。

 

 

説明パワーポイント(全17枚)の表紙

 

ベントナイト実験風景

 

深度350mの調査坑道の見学の様子(1)

 

深度350mの調査坑道の見学の様子(2)

 

深度350mの調査坑道の見学の様子(3)

 

深度350mの調査坑道の見学の様子(4)

 

 

 

【感想】

 以下に見学に参加した学生,技術職員の感想を示す。

 

 これまで原子力発電と聞くとあまり良くないものであるイメージが強かった。東日本大震災での影響もあってか、テレビなどのメディアでは原子力発電の悪いところばかり取り上げ、なくすべきものであるかのように紹介されていた。しかし、原子力発電について調べてみると、CO2を排出しないこと、発電にかかるコストが安定していること、また、使い終わった燃料を再処理することで再び燃料として使えることなどメリットがあった。デメリットしてあげられるのは、高レベル放射性廃棄物がでること、事故が発生すると深刻な被害が生まれること、廃炉に膨大な費用が掛かることであった。

 近年電気自動車など電動のモノが増えてきたが、例えば車において、多くの車が電気自動車になれば、現在の発電量では足りなくなることが想定できる。エネルギー不足を解決するために、原子力発電を用いれば環境にも優しく不足分のエネルギーを補うことができるのではないかと考えた。ただし、原子力発電を行うためには、国民からの理解が必要になる。今回の訪問で、高レベル放射性廃棄物とはどのようなものなのか、なぜガラスを使うのか、地層での処理方法はどのようにするのか、など現場で体験として学ぶことができ、原子力発電について少しは理解することができた。原子力は実は処理を丁寧に行えば良くないものではなく、大きな利益を与えてくれるものであることを知った。イメージや噂だけで判断するのではなく、実際の様子などを知ってから物事の良し悪しを判断しなければならないなと感じたと共に、原子力発電、またその廃棄物の処理について自分が将来教師になったときに正しい情報を発信してより多くの人にエネルギーについて関心を持ってもらいたいと思うようになった。

 

 見学前、幌延深地層研究センターは、実際に最終処分候補地の適性を見定める地下研究施設だと思っており、少し不安がありました。しかし、幌延深地層研究センター(日本)では、「放射性廃棄物を持ち込むことや使用することはないこと、最終処分場としないこと」を地下の見学前に聞くことで、幌延深地層研究センターは、高レベル放射性廃棄物を地層処分するために技術を磨く場所であることを実感し、安心して見学することができました。さらに、地下の見学の際も、避難場所や避難方法の説明があり、子どもから大人まで安心して楽しく見学できるよう、研究する方も安心安全に地下で作業ができるよう対策されていると実感しました。自分たちが使用した電気にもゴミがでてしまうこと、そのゴミがどのように処分されるのか、を義務教育段階から知ることは、今後の将来を担う子どもたちにとってとても重要だと思います。そのためには、幌延深地層研究センターのように、実際に高レベル放射性廃棄物を処分される場所を直接みることは、子どもたちにとってとても有意義なものになると感じました。実際に私も、高レベル放射性廃棄物を埋める地下を見学することで、資料やホームページではイメージできなかった地層の様子や、ガラス固化体の大きさ、多重バリアシステムの大きさや形をイメージすることができました。思っていた以上に人工バリアの大きさが大きく重いということを実感しました。高レベル放射性廃棄物となるのは、使用済燃料の約5%だと事前学習で学びましたが、それでも、日本では、こんな大きなガラス固化体を何万本も埋める場所が必要で、そのくらい電気を大量に使っている国なのだと実感しました。

 今回、見学を通して感じたことは、安全に高レベル放射性廃棄物を地層処分するためには、長い年月の地層研究が必要であるということです。地下水がガラス固化体に接触しないよう、地下水の流れや地下水のpHを調べたり、実際の大きさでガラス個体を地下に埋めてみる実験をしたり、地震による揺れを調べたりと、少しの地層の変化も記録として残し、緻密に調査しないといけないことが分かりました。やはり、高レベル放射性廃棄物を日本で埋めるという、新しいことを安全に行うためには、幾度の実験と膨大な調査情報が必要になってくるのだと実感しました。そして、このような日本のエネルギーを支えるための研究施設を見学することができて良かったと思いました。

 

 今回見学させて頂くことになり、初めて「高レベル放射性廃棄物の地層処分技術」について知りました。事前の説明を聞いてなんとなく想像はできていましたが、実際にガラス固化体や地下施設を見学し、リアルに感じることができました。見学に行く前は怖いイメージを持っていましたが、廃棄物を地上に置いておくよりも地下の方が安全なのかなと少し思えました。実際に施設を作るとなった時はやはり自分の故郷は嫌だなという気持ちになりますが、廃棄物が増えていく限りこういった技術で安全に処分をしていかなくてはならないのだなと心に残った見学でした。施設を見学して知ることは大切なことだと思いました。

 

 ガラス固化体は再処理をしないと作ることが出来ないが、再処理の本来の目的はガラス固化体を作ることではなく、プルトニウムと残りのウランを取り出すことにあるということを学んだ。また長期間に及ぶ保存における問題点とは何かと考えることが出来た。ガラス固化体は何重もの容器に覆われているが、この期間中にこの容器が腐食し、放射能が漏れ出る可能性もあるのではないかと感じた。その可能性も考慮して地下350メートルに保存することで安全性を確保しているということを知ることが出来た。まだ知らないことや分からないことがたくさんあるが、この機会を通して、高レベル放射性廃棄物の処理方法について新しい知識を得ることが出来た。これからは高レベル放射性廃棄物の処理の展望もしっかり確認していきたい。

 

 実際に地層処分の方法について、図や写真をもとにイメージすることはできていたが、実物を見たことがなく本当にできるのか疑問があった。しかし、今回の工場見学を通して、実物の地層処分の実験を見る中で、地層処分の問題点や他の処分方法ではなく地層処分を選んだ理由を理解することができた。また、地下350mとはいったいどのくらい深いところなのかということも考えることができた。実際に体験することができてよかった。