幌延深地層研究センター見学報告

 

三重大学教育学部技術・ものづくり教育講座電気工学研究室

(文責)松岡 守

 

 日本原子力文化財団支援を受けて,昨年度の六ヶ所村内施設見学ツアーに引き続き,今年度は幌延深地層研究センターを見学する機会を得ました。以下その概要報告です。

 

【スケジュール】

事前勉強会

20191015日(火)18時〜

 第1部「最終処分問題の背景と技術」40分、QA20分

 第2部「最終処分制度と社会」35分、QA15分

 

見学ツアー

20191026日(土)

1024分津駅集合〜(電車)〜名古屋駅〜(電車)〜中部国際空港〜(飛行機)〜新千歳空港〜(飛行機)〜稚内空港〜(バス)〜稚内駅〜(徒歩)〜宿泊先18時着

20191027日(日)

810分宿泊先〜(バス)〜幌延深地層研究センター910分着

見学 910分〜1145

幌延深地層研究センター1145分発〜(バス)〜稚内空港〜(飛行機)〜羽田空港〜(電車)〜品川駅〜(電車)〜名古屋駅〜(電車)〜津駅着195分解散

 

【参加者】

三重大学教育学部技術・ものづくり教育講座電気工学研究室ゼミ生8名(学部24年生)

,教員1

三重大学大学院教育学研究科社会人学生(三重大学教育学部附属小学校教諭)1

10

 

【当日の状況】

事前勉強会

 講師として日本原子力学会シニアネットワーク連絡会副会長/動燃事業団(現・原子力機構)元理事・環境技術開発推進本部長の坪谷隆夫氏に三重大学までお越しいただき,資料を用いてかなり丁寧に説明をしていただきました。三重大学は2019518日(火)に「学生とシニアの対話会」を開催しており,今回の見学会参加者も参加していること,また坪谷氏はその際にもお越し頂いていることから,今回の勉強会ではさらに突っ込んだやりとりをさせていただくことができました。特に,最後に聴衆一人ひとりに感想なり意見を聞いていただき,その一人ひとりにお話しいただいたことで誰もが腑に落ちた感じとなって非常に良かったと感じました。

 

見学ツアー

 資料に基づき説明いただいた後深地層,ゆめ地創館および関連施設でさらに説明,および地層処分時に用いる材料の性質を確認をする簡単な実験を行った上で,ヘルメットを被って深地層の見学をさせていただいた。

 以下に見学ツアー時の写真と動画を示す。

 

 

 

 

 

 

 

上記の動画

 

 

 

 

 

 

 

【学生の感想】

 以下に見学に参加した学生の感想文を示す。

 

 10月27日に幌延深地層研究センターの見学に参加した。高レベル放射能を安全に、どのように埋めるのか実地見学を行うことによって感じたことがある。

 第一に、我々一般人は、電気の供給は受けるだけ受け使うが、その後の廃棄物についてほとんどの場合、責任を持っていないことである。安定してエネルギー供給を受け経済活動、生活水準を維持するためには、火力、原子力発電は必要である。したがって、使えば、二酸化炭素、高レベル放射能廃棄物は出てしまう。それにもかかわらず、電気を作る側だけに責任を押しつけて、自分たちは使うだけ、廃棄物処理に反対ばかりでは無責任である。したがって、使う時と使った後のことを消費者も責任を持てる形に議論していくことが必要であると考える。

 第二に、地下に保管する方法は、安全性を何重にも確かにすれば、予想以上に現実性がある方法だと感じた。地上に保管場所を設置するよりも,バリアを何重にもすることで安全性は高められると感じた。あとは,広い地下エリアのの確保,地下保管が唯一の方法であることを消費者に理解してもらい,土地提供地域の合意を得ることであると考える。しかし,ある程度,議論が尽くされ,科学的な証明ができたら,感情論はなしとし,前に進むという方法が取られることを法律として制定し実行すべきだと考える。責任,場所のたらい回し,反対のみでは,何も決まらず,いたずらに時間ばかりが過ぎていく。決める勇気と実行力が必要と感じる。

 今回,ふだん,何気なく使用している電気が,作られる際に廃棄物を出していることを消費者として意識できた。処分についても一人一人が責任を持ち行動,決断していくことが求められていると思う。科学的な根拠を大切に,よりよい方法で処分が進むことを願いたい。

 

 私は東日本大震災があったのにも関わらず原子力発電について知識がなく、放射性廃棄物の処理の問題で騒がれているにも関わらず、知識がない。ただ、非常に危険なものであり、自分の近くに存在して欲しくないものという思いだけがあった。周りの多くの人と同じような意見を持っていたので、その感覚に違和感を得ることもなく過ごしていた。今では、原子力発電や放射性廃棄物への危機感より、自分の知識の無さに対しての危機感を強く感じている。幌延新地層研究センターでの見学に向けての勉強会や実際その見学会で、初めて放射性廃棄物の現状を知った。今までたくさんのニュースを見てきたが、実際に研究を目の当たりにすると、研究に必要な膨大な人員や費用を感じさせ、単に危険なものと決めつけて、現在自分の近くに放射性廃棄物がないからと、どこか他人事にしている自分が情けなくなった。また、それと同時に自分知識のなさに対する危機感も感じた。私は小学校の教員を目指しており、専門は技術科である。当然、子どもたちにエネルギーの授業をすることもあるだろうし、普段の会話でそのような話をすることもあるだろう。私は子どもに真実を伝えられるか、子どもたちに原子力発電や放射性廃棄物を他人事のように考えさせましまうという当然正しい訳がない方向に導いてしまわないか、怖くなった。幌延新地層研究センターでは多くの知識や危機感を感じることができた。ただまだまだ子どもたちに伝えるには知識が足りない。だから、勉強しようと思う。見学という貴重な体験をさせて頂いたことに、感謝したい。

 

 幌延深地層センターでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発について学んだ。主に地層科学研究や、地層処分研究開発を行っていて、どれも自分にとって知らないことばかりで、とても勉強になった。研究の活動として、地下深くに坑道を掘り進みながら、地上からの調査で行った地下の様子の予測を確認し、調査手法や解析評価手法の妥当性を検討しているそうだ。実際に、調査研究を行うための深度350m調査坑道などの地下施設を見学した。下に行くにつれて、少しひんやりしていて、不思議な感覚だった。また、地下350mは東京タワーよりも深く、そこで高レベル放射性物質を扱う研究をしている方々は、もしかしたら命にかかわることかもしれないという状況の中でやってみえて、本当にすごいなと感じた。私たちは、このことを知るべきだったと思うし、家族や友人にも知ってもらいたいと強く思った。放射性物質を保管することが、いかに難しいことなのか、大切なことなのか、など自分にとって大きなことを学んだ。これをどのようにして正しく子どもたちにも知ってもらうのか、しっかり考えて、そして伝えたいと思う。

 

 今回見学に伺った幌延深地層研究センターは、北海道の中でも北のほうにあり、風が強く、とても寒かった。今回の見学で行った幌延深地層研究センターは原子力発電の工程の中で最後の工程である高レベル放射性廃棄物を管理しながら処分する段階において、地下にて管理しながら処分するうえで起こる可能性がある問題を研究する場所で実際に扱うであろう高レベル放射性廃棄物を扱わないで問題を探る場所である。

 私は北海道には行ったことがなかったので、当然このような放射性廃棄物の地層処理に関する研究所に行くことは初めてだったが、比較的わかりやすい内容で簡単に理解できてよかった。世間では原子力発電所に対する風当たりはとても強いが、そのような意見は置いといて、このような問題に対する研究は進めるべきだと感じた。

 幌延深地層研究センターにおいて、地下にも行ったが地上に比べて比較的暖かく感じたが、監視カメラがとても多く侵入が難しそうなことに加え侵入があってもすぐに気が付けそうだと感じた。さすがに危険物を取り扱うためにいろいろな対策をやっていると感じた。

 今回行った幌延深地層研究センターが保有しているのは300メートルの地下だったが、実際に作るならばもっと深く作ると聞いて、とても規模の大きい話だと思った。

 貴重な体験だった。

 

 今回の工場見学では、実物大の人工バリアを観ることができたり、実際に研究を行っている地下を見学させていただけたことで、地層処分について理解がより深まったと思います。人工バリアの実物大を観るまでは、一つの人工バリアがどれくらいの大きさなのかということや、それが何万個と入るスペースがどれくらいの広さなのかということは想像の中でしかなかったため、目で確認して大きさを確認したことで地層処分の規模の大きさをしっかりと考えることができました。また、今までは地層処分の方法は既にきっちりと決まっているものなのだとなんとなく感じていたのですが、地層処分を行う場所や地層の質に応じた人工バリアの作り方を模索している状態であるということを知ることができ、地層処分を実際にしていくとなるとまだまだ多くの課題があるのだと感じました。

 展示の中には、地域との約束が書かれたものがあり、それがとても印象的でした。そこには放射性廃棄物を持ち込まないということ、研究終了後は地下施設を埋め戻すこと、研究実施区域を最終処分場としないことの3つの約束が書かれていました。この3つの約束を見て改めて地域の方に理解してもらうことの大変さを感じました。放射性廃棄物を持ち込まずに研究をその地域でさせてもらうというだけでも、理解を得ることは難しかったのではないかと思ったし、これが実際に放射線廃棄物を持ち込んで埋めておくとなると多くの反対の意見がでるのは当たり前のことだなと思いました。また、どれだけ安全に地層処分ができるとわかっていてもやはり不安が完全になくなるというのは難しいことなのかなとも思いました。

 今回の工場見学では地層処分についての理解が深まったし、もしかしたら地層処分が自分の住む地域で行われるかもしれないという人たちの立場から地層処分について考えることができたのでよかったです。

 

 福島の事故を機に放射線廃棄物の処理のために,早急に研究が行われていることがわかった。施設の方もおっしゃっていたが,ただ研究を進めるだけでなく,国民会議等を開いて,国民に関心をもたせる必要があるように感じた。自分たちが出したゴミであるという意識をもち,その処理について,真剣に考えなくてはならない。それだけではなく,これから先も電気を利用する身として,エネルギー問題を把握する必要があると思う。これから起こりうる問題について,国民が自分事として考え,一体となって解決策を考えなくてはならない。私は,来年度から小学校教員になるが,そこでは未来を担う子どもたちに,エネルギーについて考えさせる機会を与えたいと思う。教科書には,あまり詳しくかかれていないが,この問題について把握し,自分たちの今できることや将来やりたいこと,今の日本に必要なことを考えることは日本国民として大切なことであると思う。

 

 見学に行く前から、放射性廃棄物の地層処分を安全なものであると理解していた。しかし、地層処分の付近では安全の範囲内で若干は放射性物質が多く存在しているのではないか、など少し疑いを抱いてしまっていた。しかし、幌延研究センターを見学させていただいて、ガラス固化体のモデルや地層処分場を見たり、説明を聞いたりして安全を確信することができた。私は今回の見学で原子力発電に対する見方や考え方が大きく変わった気がする。やはり、自分の目で見て確かめるということが一番影響力を持つのだと感じた。よって、自分が教師になった時にもできるだけ生徒に実際に見て感じてもらう工夫をしたいと思った。また、このように実際に見れる機会を大切にし、他にも色々な情報に目を向け、発電について他人事でなく自分のこととして考えていこうと思う。

 

【まとめ】

 筆者(松岡)は瑞浪超深地層研究所も見学させていただいたことがあるが,同じ深地層といっても随分性質の異なることが肌で感じることができた。説明によると瑞浪超深地層研究所は見学できなくなるとのことであるが,非常に残念である。それは,見学施設が2か所から1か所に減ることで見学受入可能数が半減するであろうことと,見学者異なる深地層を比較して考えることがしにくくなることによる。このような施設は説明よりも実際に見せてもらわないと良くは分からない。見学受入について再考を願うものである。

 今回は飛行機の都合により見学前の説明も見学もかいつまんでのものとなった。が,説明についてはポイントだけの説明にしていただいたため,教育学部の学生にはどこがポイントなのかがむしろわかりやすかったかもしれない。将来教師となって,いずれは児童・生徒に(その時に話題になっている)地層処分等の問題に触れることになるだろう。その際に今回の見学は非常に貴重な体験として有効に働くものと期待される。