arrow研究内容
◇ 私の研究のルーツ−農芸化学

   農芸化学は,「生命・食糧・環境に関する応用化学」であり,人間にとって有用な生物や生産物について,化学を基盤として取り組む学問です.有用 天然物の探索・構造決定から,大量供給,作用機構の解明,動物や人での活性試験,実用化までの一連の流れを広い視野で捉え,その中において自分の研究には どういう意義があるのか?どうすればより良く展開できるか?など,研究のストーリーを大事にする学問だと解釈しています.研究の発展のためには有機化学だ けでなく,生化学,分子生物学,微生物学,物理化学などあらゆる方法論を取り入れ,必要であれば他分野や企業との共同研究も積極的に行います.


◇ 良い薬を創るには

 薬の分子のほとんどは,体内のタンパク質に特異的に結合することにより,その効果を発揮します.この「薬とタンパク質の関係」は,「鍵と鍵穴」に例えられます.良い薬,即ち,効果が高く,副作用が少ない薬を創るには,鍵穴 (タンパク質)に対し,うまく当てはまる鍵(薬)を創ることが重要です.

medicine and protein



◇ 環状ペプチド創 薬と問題点

 私は,薬の分子として「環状ペプチド」に注目しています.アミノ酸がつながったものが「ペプチド」で,ペプチドの端と端がつながって輪になったものが 「環状ペプチド」です.環状ペプチドは骨格が柔軟であり,多様な「形(立体構造)」をとることができるので,薬としての応用が期待されています.しかし, 骨格が柔軟であるが故に,望み通りの形に分子を設計することがとても難しいのです.

cyclic peptide




◇ 環状ペプチドの 「形」に着目

 私は,X線結晶構造解析,核磁気共鳴,計算化学などの手法を用いて,環状ペプチドの正確な形を解明し,薬の分子設計に応用する研究を行っています.設計 通りの形になっているのか,有機合成して実際の形を調べるとともに,薬の効果を検証して,環状ペプチドの形をチューン・アップしていきます.将来的には,アミノ酸の組み合わせを変えるだけで環状ペプチドの形を自在にコントロールする方法を確立し,創薬に役立てたいと考えています.

3d structure


◇ 配属したら,どんな研究をするの?

 現在は,以下の研究テーマを,学生さんと一緒に進めています.

・ カイコ麻痺を惹起する環状ペプチドPF1171 hexapeptideの作用機序解明
・ アポリポタンパク質
Bの産生を抑制する環状ペプチドPF1171 pentapeptide作用機序解明
・ 非タンパク質構成アミノ酸を含む抗菌環状ペプチドの全合成
膜透過性が高い環状ペプチドのスクリーニング法の開発
アテモヤの種子に含まれる生物活性化合物の単離・構造決定

 基本的には,何か生物活性がある化合物を有機合成して,その立体構造を 解析するとともに,細胞や動物で生物活性を評価する実験を行います.また,作用機構を解明する目的で,化合物を分子プローブ化して標的タンパク質を同定したり,生体内での立体構造や動態の研究も行います.自分で分子を設計・合成し,その効果を試してみて,薬を創っていく楽しさを共有できたらと考えています.




創薬化学研究室の紹介ページへ戻る