著作権セミナー 「知的創造教育の構築に向けての一考察」 四日市商業高等学校 世良 清 先生 ・学生時代は交通の方が専門 ・松岡先生から話があった ・商標について関心があった ・当時問題集を配ると生徒達が答えちょうだとやってくる。これがスタート ・答えを見ないと勉強できない。それが果たして学力になっているのか ・毎週水曜日に課題研究を行っている ・最後に高校入試の問題をやらせてみたら、”え、こんな難しいのが生徒の感想”いかにテストのためだけに勉強したのが、基礎学力になっていない ・受験知といってるが、これではいけない ・課題研究は本来は少人数でテーマを見つけて行う ・この実践は2年目になる。昨年は生徒6名。今年は9名。それ以外に2年生全員に対象の講演会をしている。 ・商業高校なので商標とかの申請を実際にする。協力企業を得て申請をする ・ペットボトルのウーロン茶。伊勢茶の3本。ラベル貼り、”伊勢茶”のラベル貼り。どれ飲みたいか?商標が信頼できるもとになる。同じラベルのペットボトルだがこれは絵の具 ・グッチの偽物を路上で売ってた人が逮捕された。警察官も意識が高くなってきた ・商標があると安心して飲める反面、だまされてしまう ・かつてはパソコンソフトをコピーさせてと頼まれたことがあった。生徒に何でダメだという説得力がなかった ・コピーしてはダメだというのはいいやすくなってきたし、お茶の話と絡めるといいやすくなってきた ・商標になるもの、ならないものを調査した。 ・実際に生徒の千円ずつ持たせて買い物に行った。そうしたら三重の商品が少なかった ・もう1回千円ずつ渡して三重の商品を買わせた。どれも地味 ・特許庁のDBで調べたら、非常に低かった。それでもっと提案をしたい ・来年3月で駄菓子屋さんで販売実習をしようと考えている ・お茶は全国3位。地元のNPOが開設するアレンジをすることになっている。不登校の子達にも手伝ってもらうことにもならないか ・駅前を活性化。面白い商品を売ろう。商店で商標のない物は、地元の子達に商店の商標を作ってもらおうという企画を行っている 松岡先生補足 ・商業教育研究大会で商業高校の成果を発表してなかなか面白かった。それが賞をとった。 「教師のための著作権講座」 西村泰雄京都大学助教授 ・著作権は簡単である。人のものを勝手に使ってはいけない、というこれだけ ・ぜひ著作権の精神を伝えてもらいたい ・著作権制度は何を目的にしている制度か ・著作物等の利用の促進しつつ、著作者の権利を保護する ・最近は文化の振興だけでなく、経済の発展も志向している機運がある ・保護されることで創作活動への意欲、新たな創作活動につながるサイクルを好循環させることをねらう。それを文化の振興に結びつけようというのが元々の精神 ・デジタル化により、簡単にコピーできてしまう。言い換えると著作権侵害が簡単にできてしまう ・利用の促進部分が肥大化してしまう事に最近の問題点がある ・著作者等の権利は著作者の権利と実演家等の権利に分けられる。著作者は捜索する物の権利(広い意味での著作権)実演家等は著作物を伝達する者の権利(広い意味での著作隣接権)。 ・著作物の定義「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう」(第2条1項1号) ・客観的な数値データ、既存の作品の模倣、表現されていないアイデアなどは著作物として保護されない ・著作物の例示 ・踊りの振り付けも著作物として保護される ・二次的著作物。日本語の小説→翻訳した英語の小説。原作者と二次的著作物の創作者との両方の許諾が必要になる ・ポピュラー音楽を行進曲に翻訳なども入る ・編集著作物(データベース)の著作物。その素材の選択や配列に創作性がみとめられるものは編集著作物として保護される ・編集著作物は個々の素材が著作物であるか否かは問わない。全体の利用に際しては当該著作物の権利者と素材の権利者の両方の許諾が必要になる ・保護の対象とならない著作物。憲法や法令など。判例決定等。翻訳物や編集物で翻訳や編集を国や地方公共団体、独立行政法人が行ったもの ・翻訳物、編集物で翻訳や編集を民間の人や会社等が行ったものの利用については翻訳者・編集者の許諾が必要になる ・六法全書は有斐閣が作っている。個々の情報は法令なので自由に使って良いが、どんな配列でどんな内容を選ぶかは有斐閣が権利を持っている。 ・著作者の権利。著作物を創作すると同時に、何らの手続き無しに著作者の権利を取得する(無方式主義)。 ・著作者の権利。著作者人格権、著作権(財産権) ・学校の実習で児童生徒が作ったものは当然著作物になる ・      著作人格権と     著作財産権の対比 権利の趣旨 精神的に傷つけられない 金銭的に損をしない 権利の移転 一身専属        他人に譲渡等が可能 ・著作者人格権。公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つ ・財産権としての著作権の中身  複製物を作る権利、流通させる権利、無形利用する権利、加工する権利 ・○○権の趣旨は「無断で○○されない権利」という意味である ・複製権。コピー以外に録音、録画、写真撮影、手写し、HDへのインストールを負kむ。アナログでもデジタルでも同じ ・譲渡権(映画の著作物以外)、貸与権、頒布権(映画の著作物) ・書籍雑誌の貸与権は平成17年1月1日から ・長い歴史の中で権利の生まれる時期にタイムラグがあった ・貸本屋さんでは貸与権がなかったために、著作者に一切お金が行かなかったが、改正になり、著作者の了解を取らねば行けなくなった ・複製権を用いず伝達する権利 ・公衆送信権。放送、有線放送、インターネットで送信する行為。同一構内の送信は働かない ・ある中学の敷地内。これは同一構内となる ・二次的著作物の創作 ・原則は著作者の死語50年 ・無名、変名の著作物は公表後50年 ・団体名義の著作物。公表後50年 ・映画の著作物。公表後70年まで。なぜ伸びたのか・・・映画の関係者の政治力が強かった ・1枚のCDをダビングして使いたいという場合、作詞、作曲家、歌手、レコード会社の3つの権利が入っている ・今の日本では録画された実演には権利がない(音楽と映像の違いがある) ・許諾を得る際の留意事項  我が国で保護されているものか →いいえ →利用        ↓はい   保護期間内のものか      →いいえ →利用        ↓はい  例外的に「無断で」利用できる場合か →はい 利用        ↓いいえ  権利者から利用の許諾を得る(契約する)        ↓はい       利用 ・我が国で保護される著作物 ・日本国民の著作物、日本国内で最初に発行された著作物、条約によって我が国cが保護の義務を負う著作物 ・ベルヌ条約(権利者の権利に関する基本条約154カ国)日本の著作権法のベース ・ローマ条約(実演家等の権利に関する基本条約約77カ国) ・作者の死後も人格権は残る。例えば1枚の絵をトリミングとして切り刻んでつかう。むやみやたらと色を変えると同一保持権の侵害に当たる ・当該両方法に則した著作権を有しているか確認 ・著作者は誰かは分かりやい。財産権としての著作権はそこに表示されていないので注意が必要。著作者に許諾で、著作者は財産権を持ってなくてもOKしてしまい、後でトラブルになる ・民事上の救済措置、刑事罰は引き上げられる。5年以下の懲役と500万以下の罰金 ・親告罪なので権利者しか告訴できない ・学校における様々な場面と著作権 ・オリジナルの教材に既存の著作物を取り入れる場合 ・過去の判例から最低限満たしていれば法的に問われることはない ・未公表の著作物は引用の対象にならない ・自己と引用を明確に区別すること。主従関係があること。出所の明示が必要 ・既存の著作物を利用して教材を作成する場合 ・教員等および生徒等自身が複製すること(改正で生徒等が加わった) ・授業の過程で使用することであり、必要な限度内であること ・著作権者の利益を不当に害しないこと ・A先生が利用したものをB先生が流用というのは認められていない ・ドリルやワークブックをコピーは不可 ・部数については説が分かれる。大学の大講義。200人、300人全員に配るのは権利に反すると言われる方もいるし、教育の範囲内でいいという人がいる。グレーである。 ・これら教育について裁判で争われた事例はない(著作権35条第1項) ・判例がないということはグレーゾーンが非常に広い ・権利者の利益を不当に害したというのはどこまでいれかはグレーゾーンで明確には難しい ・著作物の上映、口述など。非営利、無徴収、無報酬であればよい ・口述は国語の授業で教科書を朗読するということがあたる ・遠隔授業における公衆送信(第35条2項) ・主会場から副会場に同時中継される授業形態である ・授業を受けるものに対してのみ ・主会場において、配布、提示、上演、演奏、上映、口述されている著作物であること ・著作権者の利益を不当に害しないこと ・入学試験等の問題について ・既に講評されている著作物である、放送、有線放送が除かれること(インターネット試験などを想定)。著作権者の利益を不当に害しないこと ・文化祭等の学校行事 ・非営利、無徴収、無報酬ならば営利を目的としない上演にあたる ・学校図書館における著作物(映画の著作物をのぞく)非営利、無料 ・学校図書館における著作物(映画の著作物を除く)の貸与については現状維持 ・参考の資料 ・「学校における教育活動と著作権」 ・「著作権教育5分間の使い方」 ・以上文化庁が提供するホームページでダウンロードできる ・ 事例研究 ・ペットの肖像権については? 「近所で飼われている犬や猫とペットの写真を学校のホームページに掲載する場合の取り扱いは?」 ・肖像権。判例などで積み重ねられてきた権利 ・プライバシーの権利(平穏な生活を得る権利)→人間 ・パブリシティの権利(著名な人の肖像などの権利) ・ハブリシティ権は飼い主が持つであろう。経済的利益を得ている場合 ・ペットは可能性はなくはないが、 ・最高裁の判決ではダビスタ(競馬ゲーム)は実在する馬の名前をそのまま使っていた。馬主が名前で利益を生み出しているということで訴訟を起こした。1,2審は認められた(ペットも物であるというのが法律)しかし最高裁では引っ繰りかえった ・ペットについては現行の法制度の枠組みでは規制ができない(現段階では差し支えない) ・「生徒達が合唱コンクールで歌った曲の歌詞を、曲名と作詞家を明記しておけばよいか。ホームページに掲載は?」 ・一般的な利用方法に過ぎないので、許諾をとってとなる ・コンテンツを作っている段階であれば複製の段階である。 ・インターネットに公開した時点で公衆送信になり許諾が必要になる ・JASRACにアクセスして ・2曲の事例であげられたが、JASRACのデータベースで調べたけども1曲はあったがもう1曲は載っていなかった。インディーンズのものかも。この場合は個々の作者に問い合わせないとダメである ・「論文執筆際に曲の歌詞の一部を引用する場合があるが、JASRACでは「引用に該当にすると思われる場合であっても問い合わせるべき」と理解できる記載があります。これでは歌詞や楽曲に関わる議論が事実上できなくなる。正当な議論を保障するためにも文化庁はJASRACに適切に指導すべきではないか?」 ・著作者は権利の乱用を避けるべき。適法な引用の要件さえ満たしておれば大丈夫である。しかし引用は権利を持っている人にすれば怖い面がある ・学校の中でしか使うことができないものは学校外では違法になる。しかし引用はどこに出しても合法になる。その場合は売られても問えなくなってしまう。 ・権利者は堅く使いたい。ユーザーは緩く使いたいというせめぎ合いである。それでこういう事例が出てくる。個人的な意見では、この事例では訴えてくることはないであろう。何ら問題を生じないであろう ・ただし隠れた権利者が潜んでいる危険性もあるわけで、裁判で勝てばいいと思うなら使う。心配なら事前に相談するしかない ・著作権は私権である。著作権は権利を持っている人達が裁判を起こし、勝ち取ってきて権利を積み重ねてきた。例えばカラオケなど。 ・「著作権の主張はペンネームでもいいか?」 ・可能である。 ・「何らかの商標に使われているものをペンネームに使うとどうか?」 ・法律上の規定はない。他の著作者と誤認されると不正競争防止法などに引っかかる ・パブリシティ権の判決はネーミングについてで1つだけの判決だがどうか? ・最高裁判決なので判例として固まる。 ・写真に撮られるという行為がダイレクトに罰せられる場合は人においてのみ ・自分の買った本の贈与や売ることについてはどうか ・第一譲渡で権利が消滅するために可能 ・ソフトについては利用許諾を受けているだけ ・映画は例外で頒布権が消滅しない。全てのケースで頒布権が動くようになっている ・映画のビデオやコンピュータゲームなどの中古品販売などが問題になった ・最高裁判例ではコンピュータゲーム、ビデオゲームののパッケージの形で流通している物については、他の人に売り渡した段階で頒布権が消滅することになっている。結果として適法という判例になっている ・研究紀要なので生徒の感想などを載せる場合、授業の風景を載せる場合は、生徒の承諾がいるのか? ・たぶん著作物として保護されるであろうから、無断だといささか問題があるか。ただし授業の一環で終始してしまうならいい。板書も複製である。しかし研究紀要で複製されるとなると原則に戻って了解を取った方が良い。形式的には後見人である保護者である。 ・不利にならない財産権の行使であれば、本人だけで良い ・授業の風景写真。セキュリティ面からガードされている方向で進んでいる。肖像権に絞って考えた場合、掲載されるものによって評価が変わる。学級通信に掲載されるなら問題ない。学外の場合はプライバシーの問題など考慮しないとまずいか ・インターネットで校歌が聞こえるのをよく見るがどうなのか? ・法的な評価をすれば、校歌は委嘱制作であろう。その時にどういう契約をしたのかが(著作権が移転されたという契約を交わしてあれば)問題になろう